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心の準備は出来ていたはず。だけどやっぱり怖かった。
飲めない条件を突きつけられたら、課長にバラされたら、恥ずかしくて会社に行けない。
いつの間にか震えていた手。
ドアは開かれたのに動かない足。
直視できない仲村の顔。
「顔、真っ青だぞ?」
止めることの出来ない時間の中で、動くことの出来ない臆病な私。
「無茶な条件は出さないで・・・お願い」
自然と泣き出しそうになる。
「本気にしてたのか?冗談だよ」
仲村が私の頭をポンポンと叩いて顔を覗き込んだ。
「バカだな。バラすなんてしない。ただ、ここに来て欲しかっただけ」
その言葉を聞いた瞬間、全身の力が抜けた。
私はヘナヘナとその場に座り込む。
「はぁ、あ、はは・・・良かった・・・」
しゃがんで私と目線を合わせた仲村が手を差し伸べる。
「ごめんな・・・」
仲村の手を取りながら私は思った。
頭ポンポンって、ああいう感じなんだ。課長にしてもらいたかったな・・・
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