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「蒼人、こちらのお嬢さんを紹介してよ」
仲村の隣に腰かけたナチュラルが美しい声で言った。
あ、私の存在に気づいてたのか・・・。
自虐的な心が卑屈な独り言を呟く。
「ああ、こちら栗原サラさん。同じ銀行に勤めてるんだ」
「は、初めまして」
私は仲村の紹介の後、頭をペコリと下げた。
「初めまして。私は西城志穂。蒼人とは・・・知り合い?」
そう言ってナチュラル、あ、いや、志穂さんは仲村に目配せをした。
「志穂さん、説明がいい加減過ぎだよ」
仲村も優しい笑顔を返した。
目の前の二人の慣れた雰囲気。もしかして、この人は仲村の彼女なのか・・・。
見た感じ、志穂さんは少し年上のようだけど美男美女のお似合いのカップルだと思う。
「志穂さんはさ、オレの高校からの親友のお姉さんなんだ。30歳で結婚してて旦那さんも居るんだ」
「えっ?」
予想と違う展開に、少しだけ驚きの声を漏らしてしまった私。すかさず志穂さんがツッコミを入れる。
「サラちゃん、その驚きは年齢に対して?」
『仲村の彼女かと思ってました』とは、さすがに言えなかった。
「はい。もっとお若く見えたので」
嘘じゃなかった。30歳には見ない。
「蒼人、聞いた?なんて素直なお嬢さんなのかしら」
「はいはい」
息の合った二人は、本当に長年の知り合いなのだろう。
仲村は、そんな人を紹介して何を企んでいるのだろう・・・
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