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「とてもワクワクしたの。絶対その子をシンデレラにするって思った。そしたらね、心の調子も良くて薬の回数も減ってきたのよ」
寂しげに笑う影のある横顔。
私の胸はチクチク痛んでいた。
私が拒否したら、この人はまた薬に頼って生活するのだろう。さっき仲村があれほどムキになったのは、私じゃなくて志穂さんを救うためだったんだ。
きっと、彼女はそれくらい深刻な状況にあるのだろう。
「蒼人を責めないでやって欲しいの。悪気があってあんな言い方したんじゃないのよ」
バスが停まっては、乗り込まない私たちを残して走り出す。
一方的に志穂さんが喋り、私はただ聞いてるだけの状態が続いた。
喋らなかったんじゃなく、私は喋れなかった。
仲村を弁護するために追いかけてきたのか、それとも私に「イエス」と言わせるためなのか、真意は掴めない。
私たちがバス停に来て、五台目のバスが走り去った。
志穂さんがベンチから立ち上がる。
「いろいろごめんなさい。ただ、蒼人だけは恨まないでね」
そう言い残し、私に背を向けた。細い肩が余計に寂しそうに見える。
ここで、情に流されちゃいけない。
そう思ったのだけど・・・。
「ま、待って下さい!!」
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