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午後六時、私と蒼人は志穂さんの家を後にした。
志穂さんが貸してくれたファッションやメイクに関する本をたくさん入れたバッグを蒼人が持ってくれる。
「あ、髪になんかついてるぞ。取ってやるよ」
「ありがとう」
私は足を止め、蒼人は私のほうへ手を伸ばした。
「何するの?見えないんだから!危ないじゃない!」
突然取り上げられたメガネ。
夕暮れ時にメガネ無しだと、私の視力では心もとない。
「せっかくキレイにしてんだから、メガネ外したサラを皆に見てもらおうよ」
慌てる私にそう言って、蒼人は私の手を握った。
「安心しろ。ちゃんと誘導してやるから」
もう、疑ってなんかいない。彼を信用してる。からかったりすることはあるけれど、この人は私を傷つけようとはしていない。
私は蒼人の手を握り返した。
「うん。『友だち』って思っていいんだよね」
「今さら何言ってんだ。初めて電話した時から、オレはサラを友だちだと思ってるよ」
「うん・・・」
さっき抱きしめられた時とは違う。とても温かい何かに包まれて、私は駅までの道のりを歩いた。
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