変身と悪魔の仕上げ

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「ごめん!大丈夫かい?」 声で分かる。私、斎木課長にぶつかったんだ。 課長が私を抱え起こした。こんな緊急事態なのに私は肩に感じる課長の手の温もりにドキドキした。 「こちらこそすいません!ちょっと急いでいて、不注意でした」 「栗原さん、怪我は?」 心配してくれる課長。少し考えたけれど、さほど痛いところもない。ただ・・・ 「すいません、メガネがどこかに・・・」 前が良く見えない。 「あぁ!ここに・・・」 メガネを取って貰えると思って、私は手をだした。が、聞こえたのは残念なお知らせだった。 「割れてる・・・ね」 「え!」 私は両手で口を覆った。 「申し訳ない・・・」 課長が呟く。 悪いのは課長じゃない。私が急いでいて前方不注意だった。それに、ずいぶん長きに渡り使っていたものだから、寿命だったのかもしれない。 だけど、困った。外はもう薄暗い。この暗さでメガネ無しではちょっと厳しい。予約の時間が・・・。 手渡されたメガネは耳に掛けるフレームが片方取れていた。 これならなんとかイケる。 「大丈夫です。片方は手で持ちますから。すいませんでした。ちょっと急ぐので失礼します」 私は頭を下げた。
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