変身と悪魔の仕上げ

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ジョキッ・・・ バッサリと切られた髪。 もう、引き返せない。進まなきゃいけない。 希望の長さまで切られた髪。細かい仕上げの前にカラーリングが施された。 ぼやける視界に入る自分のシルエット。ただそれを見るだけでも髪が短いのが分かる。 そして、軽い。 良く見えない私の代わりに、志穂さんが横から質問をしたり希望を告げたりしてくれた。 それは実況中継のようで、安心できた。 本当は、パーマもと思っていたのだけど、もともと緩いくせ毛だから、それを生かそうという話になった。 広いフロアにたくさんの鏡。明るくて眩しくて、キラキラしてる。こんな大きな美容室来たの初めて。一応お客様なのに、こちらが恐縮しちゃうようなオシャレな空間。 不安と期待を胸に抱きながら、身を任せていた。 「サラちゃん!とっても可愛いわ!」 仕上げのブローが終わった瞬間、志穂さんが私に抱きついた。 「ほ、本当ですか?」 私はバッグからフレームの壊れたメガネを取り出し、それを掛けて鏡を見た。
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