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「メガネ、弁償するよ」
まだそこに拘っている課長。
「と、とんでもない!家に帰れば予備がありますし」
しかも私の不注意だから弁償してもらう理由もないし。
「でも、それじゃあ僕の気が済まないよ・・・」
何度断っても引かない課長。でも、買ってもらう訳にはいかない。
私は仕方なく本当のことを話した。
「明日、眼科に行ってコンタクトにするんです。だから、もうメガネは・・・」
「え!そうなんだ!」
「・・・はぃ」
本当は、サプライズ的な感じにしたかった。私、あなたに驚いて貰うために変身するんです。それなのに、髪を切ることも、コンタクトにすることも事前に話すことになるなんて・・・。
「それは週明けが楽しみだね」
「そんな・・・」
私の楽しみは半減してしまったけれど、課長は話題が出来たことで嬉しそうだ。
「じゃあ、メガネ弁償出来ない代わりに、何かできることないかな?」
「もう、本当に・・・」
いいですって言いかけたけど、ふと頭をよぎった欲。
課長と二人きりになれることなんて滅多にない。
これも、何かのきっかけになるかもしれない。
「あ、じゃあ、またランチに誘って下さい」
断られるか、OKか。どうにか断られない範囲で考えて、私は今できる精一杯のワガママをぶつけた。
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