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「何してんだよ!」
勢い良く私たちの間に割って入り、男性の手を捻り上げたのは、蒼人だった。
「イテテテ!デートならデートだって言えよ」
男性はバツが悪そうに、急いでその場を立ち去った。
蒼人は怖い顔でその男性の背中を睨んでいる。
「ありがとう・・・」
良かった。どうなるのかと思った・・・。私はホッとしてお礼を言った。
「バカか?ああいう時はデートじゃなくてもデートだって言うんだよ!」
素直に感謝したのに、キツい口調で怒鳴った蒼人。今日初めての会話が説教だった。
蒼人はくどくどと暫く説教を続けた。私も最初は申し訳ないと思った。だけど初めての経験で仕方なかったのだから大目に見て欲しい。せっかく頑張ってオシャレして化粧もしたのに、そこには一切触れないし。
しかも周りには大勢の人。
「ごめんなさい」
早くお説教を終わらせたくて、私は俯いて謝った。
パチン!
そんな私のオデコを軽く弾いた蒼人は困り顔で私を見ている。
「サラは無防備なんだよ。そんなにキレイになったらさ、これからは声も掛けられるだろ。気をつけろ・・・」
「・・・」
今、キレイになったって言った・・・。
お説教を切り上げて歩きはじめた蒼人の後を、私は慌てて追いかけた。
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