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「食事の前にさ、ちょうど見たい写真展やってんだ。寄っていいか?」
「うん」
待ち合わせは、夕食には早い午後5時だった。そもそも行くつもりで早めの待ち合わせにしたのかもしれない。
待ち合わせ場所にほど近いギャラリーで開かれているのは『空』がテーマの写真展らしい。
「オレ、写真好きなんだ。志穂さんの弟と仲良くなったのも写真がきっかけだった。まぁ、アイツみたいに仕事にしようと思える程じゃないけどな」
「そうなんだ。なんか意外だね」
「どういう意味だよ」
現実至上主義って言えばいいのだろうか。蒼人の自信たっぷりで現実を見つめている感じ。
一瞬の奇跡を切り取った幻想的でロマンチックな写真なんて、蒼人からは遠いもののように思えた。
しかもテーマが『空』だなんて、都会的な蒼人には、何だか不似合いだ。
「どちらかというと、報道写真とか好きそうなイメージだったから」
「そっちも嫌いじゃないけどな」
正直に答えた私に、蒼人は笑顔を返した。
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