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鈍い痛みが残る体を起こすと、隣には微かな温もりが残るだけで、蒼人の姿は無かった。
この状況で悟る。昨夜のことは夢じゃない。
遮光のカーテンから漏れる光が見えるということは、夜は明けているということ。急いで時間を確認すると、既に朝の10時を回っている。
友達と食事に行くとだけ伝えていたから、母から何通かメールが届いていた。
〓飲み過ぎちゃって、友達の家に泊まったの。連絡しなくてごめんね〓
と慌てて返す。
「はぁ・・・」
ため息で見つめるドアの奥から微かに聞こえるシャワーの音。蒼人であることは間違い無い。
蒼人が出てきたら、どんな顔をすればいいのだろう。
笑って挨拶?謝る?怒る?
きっと、どれも出来ない。二度と会わない行きずりの人なら、今すぐ逃げ出せばいい。だけど相手は会社の同僚で私の大切な友達。そして、私の初めての人。
ガチャ・・・
ドアノブが動く音がして、私はハッと我に帰った。
ヤバい・・・蒼人が出て来る。
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