重ねる罪

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前に『早く電話に出てくれないと不安だ』と言われたことを思い出したけれど、さすがに出るのが怖かった。 会社では、挨拶したり仕事のことで話すことがあったり、当たり障りのない接触はあったが、仕事以外での接触をあの日以来していない。 私はゴクリと唾を飲み、恐る恐る電話に出た。 「も、もしもし・・・」 『サラ・・・』 ズキン・・・ 電話越しに聞こえた、私の名を呼ぶ蒼人の声が呼び起こしたのは、あの夜の記憶。 たぶん私、今はあのことを後悔してる。 強く拒むべきだったと。 『土曜・・・だけどさ』 「うん」 『行くだろ?』 「え・・・まだ決めてない」 『用事でもあんの?』 「あ、え・・・と、特には」 返事を考えてる途中で受けた電話。 しかも、蒼人の声に動揺した脳じゃ、理由なんて突然考えられない。
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