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「や、やだぁ!それじゃなくても緊張してドキドキしてるのに!」
私の心臓を、さっきまでと違うドキドキが埋め尽くす。
「なに?まだアイツの反応が気になる?」
「あ、当たり前でしょ・・・」
そう、今回の変化を誰に見て貰いたかったって、課長に見て貰いたかったのだもの。
そして、出来ることなら褒めて欲しい。
「だよな・・・。ま、心配するな。始業時刻まではオレが一緒に居てやるから」
「うん・・・」
「行くぞ」
不意に握られた手。
「イヤ!」
私は思わず蒼人の手を振り払った。
触れられた瞬間、一気に蘇ったあの夜の全て。
優しく、激しい時間。
「ご、ごめん。会社の人に見られると、恥ずかしいから」
私は驚いて固まっている蒼人に嘘の言い訳をした。
もちろん、恥ずかしいのもあるけれど、反射的に振り払ったのは、蘇る感触を断ち切るため。
「そりゃ・・・そうか。つい癖で・・・悪かった」
蒼人は寂しげに笑うと、ゆっくりと歩き出した。
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