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「お、お、おはようございます」
みっともない程震える自分の声は、さらに私の緊張を呷った。
い、嫌だ。変に思われちゃう。
あ、そうだ。蒼人は?助けて蒼人!
そう思って後ろを確認してけれど、いつの間にだろう、彼の姿はそこには無かった。
一緒に居てくれるって言ったのに、こんな時に何処行っちゃったの?
一人にしないで。怖いよ蒼人。
オロオロと目を泳がせる私に、課長の柔らかい声が届いた。
「これは・・・予想以上だね」
「は・・・?」
入口に立ったままの私の方へ、課長がゆっくりと歩いて来る。
徐々に近づく優しい笑顔に、胸が詰まって涙が出そうになった。
「随分緊張してるみたいだけど、心配ない。とても素敵になった。誰もが好意的に受け止めてくれるよ」
温かい・・・。大きくて優しい手が私の手を取ってオフィスの中へと促す。
一瞬にして溶けた緊張。動けなかった私の足は自然に前へと進んでいた。
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