235人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「僕は車だから飲めないけど、もし良かったらお酒頼もうか?」
課長が気遣ってくれる。正直、緊張でガチガチの私は少しだけアルコールの力を借りたかった。お酒を飲む女って、あんまり可愛げ無いかな・・・なんて思ったけれど、このままじゃあんまりにも苦しい。
「一杯だけ、頂いてもいいですか・・・」
消え入りそうな声でお願いすると
「一杯じゃなくても、飲めばいいよ」
と、笑顔を見せてくれた。
熱燗が一合、徳利で運ばれてきた。
寒い季節には嬉しい。
「じゃ、どうぞ」
「あ、ありがとうございます!恐縮です!
課長がお酌をしてくれる。
受ける手が震えてお酒が零れてしまいそうになる。
課長はまたクスクスと笑って
「お猪口貸してごらん」と言った。
結局、課長が手酌をしてお酒だけ私に差し出してくれる格好になってしまった。
「す、すいません・・・」
ノンアルコールビールを注文した課長に、これまた震えながら私がどうにかお酌をしたけど、震えたせいかコップの中は泡だらけになった。
「お疲れ様」と課長が音頭を取ってくれて軽く乾杯し、夢にまで見た二人きりのディナーがスタートした。
最初のコメントを投稿しよう!