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さすがに美味しいお寿司。母と行く回転寿司とはワケが違う。
「すっごく美味しいです」
お酒の力も手伝い、私の緊張も幾分か解けてきた。
基本、仕事の話が中心ではあるけれど、課長も多少愚痴をこぼしたりして、会社の中で業務の話をするのとは全然違う。
清く、正しく、美しい。優等生なイメージとは違い、適当な部分や優柔不断なプライベートの顔も覗かせた。
それがまた人間らしくて、更に好感が持てた。
この笑顔を独り占めできたら・・・なんて、図々しいことを考える。
そうして、話をしている中で、ふと感じることがあった。
父だ・・・
課長と一緒に居ると、思い出
の中の父と交錯する瞬間が度々ある。
課長を好きになったきっかけも、褒められたことだった。
何でもないことでも頭を撫でて褒めてくれた父を重ねていたのかもしれない。
女の子は父親に似た人を好きになるって、そんな通説があるけれど、きっと嘘じゃ無い。
私は、そんなことをぼんやりと考えていた。
「栗原さんが酔っちゃうといけないから、そろそろ話しておこうかとおもうんだけど」
そろそろ一合の徳利が終わろうとする頃、遂に課長は本題に入る。
私も手を止めて聞く体制をとった。
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