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嘘をついて部屋から逃げたけれど、電話をかける相手も居ない。
とりあえず格好だけでもと思い、バッグから携帯を取り出した。
嘘でも掛けてるふりしようかな・・・
下手な嘘だから、怪しまれているかも。私のしゃべり声がしないと変だよね。
それに、あの雰囲気のまま二人だけにしておきたくない・・・
そんな焦りも脳裏をかすめる。
今日は休日だから誰も出やしないけど、会社の番号を画面に表示してみた。
その時だった。
「嘘が下手ね」
突然背後から声がして、心臓が跳ねた。
「し、志穂さん!」
振り向いた私の視界に、不敵に微笑む志穂さんの姿。そして、
「蒼人のことが好きになったの?」
長い髪をかきあげながら、更に私に近づいた。
「そ、そんなこと・・・」
無神経な志穂さんの言葉。
この人は、何を言ってるんだろう。
それが勘違いであろうとなかろうと、この友人同士という関係を保つ中では、口にするべき内容ではない。
どんなに不快に感じても、私はこれまで我慢してきたのに。
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