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「ごめんなさい。異動が近いから、いろいろとあって・・・」
いかにもという言い訳をしながら、私は笑顔を作ってキッチンに入った。
「そっか、良かった。蒼人と私が仲良いから、サラちゃん妬いちゃったのかと思った」
「あ・・・はは」
今、キッチンに蒼人は居ない。
志穂さんからの言葉の攻撃は、ボディーブローみたいに地味に効いてくる。
本当なら、言い返してしまいたい。
『蒼人は私のことが好きなのよ』って。
『蒼人と私は、あなたの知らないところで深い関係になっているのよ』って。
でも言えない。
だって、この人は心を病んでいるんだもの。
寂しくて、可哀そうな人なんだもの。
長年、蒼人が壊さないように大切にしてきたものを、私が壊すことはできない。
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