ホントの気持ち

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「栗原さん、ちょっといいかな?」 「はい」 斉木課長に別室に呼ばれたのは、異動から数週間経って本店の仕事にも少し慣れてきたある午後のことだった。 「忙しいのに悪いね。そこに座って」 「はい」 部屋のソファーに座ると、課長はお茶を出してくれた。 相変わらずカッコいい課長。 だけど私には以前のような恋愛感情は無かった。 六月には挙式だという噂を聞いて、心から祝福している。 それよりも、課長を見ていると蒼人が重なることがある。 鼻や唇の形、それから声。本当に良く似ている。 さすがに従兄弟だな・・・。 だから、課長と接するとちょっとだけ辛い。 そんなことを知る由も無い課長が、ゆっくりと話し始めた。 「仕事のことじゃないんだけど・・・一つ頼みがあるんだ」 「はい。何でしょう」 ごく普通に尋ねた私に、課長は言い難そうに言った。 「ある人の恋人のふりをして欲しいんだ」 「へ?」
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