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暫く沈黙が続いて、お互いに動けないでいる。
すごく嬉しいけれど、現実問題として私たちはまだ20代前半。
その場の雰囲気に流されて・・・なんて、単純なものじゃない。
今はまだそうするべきじゃない。
「ごめん・・・無責任なこと言った」
切なくなる程の優しい声で、蒼人が呟く。
「つい最近真面目に仕事しようと思ったばかりのオレが言うセリフじゃないよな」
口走ってしまったことを自分を卑下することで優しく訂正する蒼人。
彼もきっと、私たちにはまだ早いと思っている。
「変なんだ。不安になってぬいぐるみ贈ったり、こんな縛るようなこと言ってみたり・・・」
私の首筋に顔をうずめ、ギュッと抱きしめる腕に力を入れた。
本当は、ずっと一緒に居たい。
私だって、不安で不安で押し潰されてしまいそう。
だけど一方で、この不安の大きさが、好きって気持ちの大きさと比例してることも知っている。
「好き。すごく・・・好き」
そう、大丈夫。
私、この腕の温もりを信じている。
「オレも、好きだよ」
私たちは確かめ合うように何度も唇を重ねた。
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