エピローグ

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メールに添付されている写真には今の志穂さんの姿が写ったものも含まれている。 私は、HAYATOからのメールで彼女の近況を一方的に知っていた。 少しふっくらしたであろうか、優しい母親の顔で見守る先には、背の高い男性に抱かれた幼い女の子が幸せそうに笑っている。 三人の前に一人だけ座っている髭を生やした野性的な男性がHAYATOであろう。 蒼人とのことで、人と関わることの怖さと寂しさ、そして楽しさや喜びを知った。 人の心は複雑で、計算じゃ答えは出ない。 嫌な思いもしたけれど、彼女が居なければ、それを知ることも、人を許すことの大切さに気付くことも無かっただろう。 彼女が幸せそうで・・・良かった。 私はそう思うだけで、画面をスルーする。 いつものことだ。蒼人はメールを読んだら開きっぱなし。ネットで調べものをしても画面を開きっぱなし。 特に何かを意図的に隠したりするようなことはない。 HAYATOからのメールを削除したり、私が見ないようにすることも出来るだろうけど、あえてそうしないところに、逆に裏の無さが窺える。 だから私もあえて触れない。 これが私たちの当た前で、既に日常になっていた。
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