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「大丈夫…起きて…!」
あれ、誰かの声が聞こえるなぁ~…何か言ってるみたいだけど…
「起きてください!」
「ん~、何なの?」
ボクが眼を開けると、知らない女の子の顔が見えた。
「大丈夫でしたか、よかった…」
「うん、大丈夫だよ~。おはよう…やっぱ眠い…」
「ね、寝ないで下さい!」
ボクがまた寝ようとしたけど、女の子に止められた。
「何で寝させてくれないのさ~?」
「いや、こんな状況ですし…」
ボクの顔を覗き込んでいる女の子は、真剣な表情でそう言った。
こんな、って…
「膝枕のこと?」
「え?いや、まぁ…それもですけど…」
そうなんだよね。いつの間にか、ボクは森の中で膝枕されてるっていう不思議な状態なんだよね。
「ありがとね~。え~っと、キミの名前は…」
「あ、私は犬走 椛といいます。この妖怪の山の警備をしていて…」
ボクは、椛と名乗った子の膝に預けていた頭を浮かせて、ゆっくりと立ち上がる。
「椛ちゃん、って言うんだ~。いい名前だね~」
「え?あ、ありがとうございます…」
椛ちゃんは、照れながら立ち上がる。
白い髪に、綺麗な肌。それと、刀みたいな物を持ってるんだね。
な~んか、可愛い子だなぁ~。
「それで、貴方の名前は…」
「ボクの名前?ちょっと待ってね、思い出すから…」
「いやいや、自分の名前くらい思い出す必要ないでしょ…」
そんな事言われてもね~…ここ数百年は本名で呼ばれた事は無かったから…
「ん~と…思い出したよ!ボクの名前はね、濁河 玲だよ~」
「にごりご、れい…ですか。変わった名前ですね」
「まぁ、そうだね~。あんまり見ない名前かもね~」
「さて、ここからが本題ですが、貴方、ここで何していたんですか?」
「寝てたんだよ?」
「そうですね、まぁ…って、そういう事じゃなくて!」
なんだか、椛ちゃんが真面目モードな感じだね。まだ会って数分だけど、なんとなく分かるよ。
「ここは妖怪の山なんですよ?人間が入ってはいけない場所って事は知ってますよね?」
「知らないよ?」
「えっ?」
妖怪の山なんて、初めて聞いたよ…
「それと椛ちゃん、ボクは人間じゃないよ?」
「えっ?」
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