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「それではレイ、まずは貴女が何の神様か教えて下さいね」
「ん~…何の、って?」
椛ちゃんがボクの事を知りたいって言ってたから質問に答えようとするけど…
ボクは、周りの人間から『神様』としか呼ばれてこなかったから…
「ほら、よく商売繁盛とか健康祈願とかありますよね?あんな感じで…」
「人間たちが、どんな願い事をボクにしていたか、って事?」
「そういう事ですね」
それなら、だいたい分かるかも。
「えっとね、人間たちはボクに『温泉がよく湧きますように』って願い事をしてたよ~」
「温泉、ですか…」
「うん、ボクの居た場所は、ある山の中の温泉街でね、ボクの濁河って名前はその地名から付けられたんだよ」
まぁ、そんなに有名ではない温泉街なんだけどね。いい所なんだけど山奥すぎて…
「そうなんですか…じゃ、何百年も昔からそこを守ってた神様なんですか?」
驚いたようにそう聞いてくる椛ちゃん。まぁ、普通はそうなんだろうけど~…
「それが、ボクは生まれてからまだ30年くらいなんだよ…」
「なんか、神様にしては若すぎますね…だからこんなに可愛い、いや幼いんですか…」
「お、幼くなんかないよ!」
そりゃ、他の神様より生きてきた時間は短いし、背も椛ちゃんよりはずっと低いけど…
「けど私、レイを見たときに10歳くらいの人間の子に見えましたよ?」
「む~…それでも神様なんだよ?」
「分かってますよ。怒ったレイも可愛いですね~」
そう言って、椛ちゃんはまたボクの頭を撫でてくる。
「な、撫でるのは止めてよ…」
「どうしてですか?」
「だって…なんだか恥ずかしいから…」
「照れてるレイも可愛いですね~。よしよし」
椛ちゃんは、手をボクの頭から背中に移して、ボクを抱きしめ…はわわ!?
「も、椛ちゃん!?ホントに恥ずかしいって…」
「こんな森の中で、誰も見てないから大丈夫ですよ?」
「そういう問題じゃなくて…」
こんな事されてると、だんだん身体が熱くなってきちゃうよ…
「ふふ、レイって暖かいですね…というか熱っ!?レイ、大丈夫ですか?なんだかリアルに湯気が出てますけど…」
「大丈夫だよ。よくある事だから…」
「さすが、温泉の神様ですね…」
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