エピローグ

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 都会の喧噪から離れた自然に囲まれた一件の建物。 そこは心に病を持った人々が平穏に暮らすことが出来る場所。 一面、芝生が敷き詰められた庭にはいくつもの樹木が立ち並び、生い茂った葉の間からは、春の木漏れ日が降り注いでいた。 そんな中、フォークギターの音色が静かに響き渡り、それに反応したかのように心地よいそよ風が木々の間を通り抜けていく。  この場所が記された一枚のハガキを手に、車から降り立った宮登は、ギターの音に導かれるように芝生を踏み締めて行く。 そして、一本の大きな木の前に辿り着くと、その木に背中を預け、ギターを引いている白い衣服を身に纏った男性の姿に目を奪われた。 男性は、ときおり思い出したように歌詞を口ずさみながら、幸せそうな笑みを浮かべギターを弾き続けている。 見た目は以前と変わらないその姿に、宮登は思わず涙ぐむも慌てて口元を手で押さえると漏れそうな嗚咽を耐えた。
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