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一人、木陰に腰掛け、フォークギターを奏でていた三神光輝-みかみこうき-(25)は、ふとギターを弾く手を止めるとおもむろに振り返る。
そして、視線の先に宮登の姿を捉えると、色素が薄い茶色い瞳を大きく見開き声を上げた。
「”みやっ”?」
さっきの歌声とは到底同じ人物とは思えない、幼い口調で自分の名を呼ぶ光輝の姿に、宮登は目を細めると、一歩一歩近付いて行く。
「元気にしてた?」
まるで幼い子供にするかのように、優しい手つきで自分の頭を撫でた宮登に光輝は今にも泣きそうに顔を歪ませると、ギターを放り出し勢いよく立ち上がった。
「どこに行ってたんだよっ? オレッ、すっげー探したんだぞっ!」
瞳を潤ませながら訴える光輝に、宮登は苦笑いすると優しい口調で言い聞かせる。
「ごめん。ちょっと寄り道してて」
宮登の言葉に、光輝は一瞬、戸惑った表情を浮かべたが、次の瞬間、宮登の手を握ると大声を上げた。
「……どこか行くの? オレもいっしょに行くっ!!」
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