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山陰地方の小さな町。
海沿いにある、バスが二時間に一台しか停まらない古びたバス停。
つぶれかけの釣具店以外には、人がいそうな場所もない。
空は既に蒼く変わり、海水が浜辺を浸食し始めていて、黒くなったテ
トラポッドと堤防がそれを阻んでいる。
その堤防から見える黒い岩礁を見ながら、二人の男が話し込んでいる。
一人は背の低い年配の男。
もう一人は、若い作業着姿の男。
「……会社でも家でも怒鳴られて蹴られて、もう嫌なんです」
弱々しい声。
「それは可哀想に、苦労してるんだねえ」
底なし沼の泡のような、暗く濁った声。
「こんな人生、もう嫌です」
「……君は、何になりたい? 何をしたいんだね」
若い男は俯いたまま黙り込む。
「わからないか」
「……すいません」
「じゃあ君は、何が好きだ? 道具でも、食べ物でもなんでもいい」
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