第三話 忘れられたい

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まぶしい光に照らされ、男は目が覚めた。 いつの間にか、堤防の下、テトラポッドの一つに寄りかかるようにし て眠っていた。 水平線に、陽が昇っている。 体を起こそうとすると、手に砂の感触がした。 頭が痛い、砂浜に擦り付けられるような痛み。 下半身から尿意がこみ上げてきた。 男はよろめきながらも立ち上がり、ふらついた足取りで堤防の階段を 昇った。 橙色の陽が差した道路を、男は特に用心もせず渡ろうとした。 途端、曲がり角からトラックが近づいてきて、男に迫った。 それに気がついた男は寸前で走り、避けることができた。 「(クラクションすら鳴らさないなんて、ひき殺す気か・・・・・・)」
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