第三話 忘れられたい

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腹を立てつつも、道路の反対側にあった釣具店へとたどり着いた。 店の扉は開かれ、その前で主人がホースで打ち水をしている。 「すいません、トイレを貸してほしいんですが・・・・・・」 声を掛けつつ男は主人に近づいたが、主人は全く反応せず、男のいる 場所に水をかけ始めた。 男のズボンに水がかかる。 「何するんですか」 それでも、主人は無反応。 「(なんでだ・・・・・・)」 男はそっと主人の背後にしのびより、軽く後頭部をはたいた。 主人は頭を押さえ、戸惑いつつ背後を見る。 だが、すぐ目の前にいる彼の存在がまるで無いかのようにほかの方向 を見渡し始め、やがて首を傾げて打ち水を再開した。 「(さっきのトラックといいこの主人といい、僕がまるでいないかの ような行動をするぞ・・・・・・?)」 その問題に悩みつつも尿意には勝てず、男は店の中に入った。
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