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「(自由になれる……昨日会ったあの人はそう言っていた。そして、
確か薬を貰って、それを飲んだ)」
小便器で用を足しながら、男は物思いに耽る。
「(しばらくすると頭が重くなって、気がつくと朝、浜辺に倒れてい
た……)」
用が終わり、男は便器から離れた。
「(そして、皆が僕のことをいないかのように振る舞う……)」
ともかく手を洗おうと、すぐ右にある洗面場の方を振り向いた時、男
は絶句した。
鏡に映ったその顔は、見知った自分の顔ではなかった。
薄ら赤いと緑色の繊維的な肌に、細長い輪郭。
そして頭上には、真っ白なつぼみが、先端から垂れる黄色い弁と共に
そそり立っていた。
この滑稽かつ奇っ怪な姿を見てこの男、江藤聡は自分が”変化”し、”生まれ変わった”ことを悟った。
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