第三話 忘れられたい

7/31
前へ
/33ページ
次へ
それから一週間後。 異形へと生まれ変わった聡は、田舎町の商店街にいた。 昼前、まばらではあるが買い物に来た人間が行き交っている。 だが誰も、道の真ん中をフラフラと歩くおぞましい姿の聡に対し、一 切の注意を払うことはない。 白シャツにズック姿の中年男の肩が、聡美の肩にぶつかった。 だが、中年男は肩を押さえて訝しがるばかり。 聡はにやけながら、男の背中に蹴りを入れた。 男は前につんのめり、戸惑いながら辺りを見回した後、逃げるように その場から立ち去った。 茗荷人間と化した聡は、人々から存在を忘れられたのだ。 彼の顔と融合している開きかけの花、これはみょうがの花である。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加