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車を停め、運転席から降りてきた司は、相変わらずものすごく背が高い。
前と同じように、真彩は司を見上げる。
30歳の司は、前に交換した写メと同じく、柔らかくなった笑顔で真彩の前に立った。
男の癖に綺麗な富士額に、はっきりとした太い眉毛が印象に残る。
昔と違い、垂らしていた前髪、耳に掛かるヘアスタイルは、短くさっぱりと刈り込まれていた。
ヘアワックスを使って、トップの毛を立たせているのが洒落た感じだ。
「よう。久しぶり。とにかく乗れよ」
司は、助手席のドアをさっと開け、手振りで乗るように促した。
「ありがとう。司。
わざわざゴメンね」
助手席に乗り込んだ真彩は、理亜を抱いていない右手で司を拝むようにする。
司の車に乗ったのは始めてだった。
至近距離に近づき、鼻の敏感な真彩はかすかな司の体臭を嗅ぎ取る。
真彩と付き合っていた頃、司は学生、社会人になったばかりだったから、車など持っていなかった。
ただ、故郷の宮古島では、18歳から運転していると言っていた。
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