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乳幼児によく起こる感染症で、高熱が出る病気だ。
風邪とは違い、治り際に発疹が現れるのが特徴だという。
「渚もやっぱり、赤ちゃんの時、やったんだ。
確か渚が8カ月くらいの時。
元奥さん、稽古で帰れなかったから俺が病院連れて行ったよ」
司は、淀みなく『元奥さん』と発音した。
メールを始めた頃、司は前妻は劇団女優だったと書いていた。
真彩の胸で前抱っこした理亜は、寝息を立て始めた。
身体は熱いけれど、なんとか落ち着いてくれている。
理亜の様子を気にしながら、真彩は問う。
「えっ…稽古って?」
「あいつは劇団に所属していて、家庭より舞台や稽古を優先してた。
そうしないと端役ですら、もらえないから。
あちこち色んな劇場でやるし、時間もめちゃくちゃ不規則だったね。
帰れないこともあったし。
うちは家事も育児も家にいるほうがやるって感じだったよ。
どっちも出来ない分は、ベビーシッターを頼んでた」
「そうなんだ…」
次々に遠ざかってゆく幾つもの街灯を横目にしながら、真彩はまた司の体臭を感じた。
司は仕事を終えてすぐ真彩を迎えに駆けつけ、風呂に入っていないのだろう。
司の皮膚から滲み出てくるその体臭は、真彩が20代前半から半ばの、無防備な若い娘だった頃の記憶を思い出させる。
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