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『それよりあなた、一体なんのテレビ見てるの?』
用件も終わり、そろそろ切ろうかという頃合いで、女房が妙なことを言った。
「テレビって今か?何もついてないぞ」
さっきまでつけっぱなしだったテレビは電話に出てすぐに消した。
西日が差し込む部屋は俺の声以外はまったくの無音だ。
だからこそ、次に聞こえた言葉に背筋に冷たいものが走った。
『嘘ぉーだってさっきからずっと女の人の笑い声が聞こえるわよ?』
「え?」
『ずーっと大笑いしてるから変な番組ねって思ってたんだけど……違うの?』
──何をバカな
それでもまたあいつがたちの悪い冗談でも言っているのかと思い、そう軽く返そうとしたのだが。
次の瞬間、確かにそれは携帯のスピーカーから聞こえてきた。
『違うよ』
楽しげな女の声が。
途端に部屋に笑い声が響く。
それは隣から聞こえてくると思っていたもので、いつもより近いそれは……──
「うわあああぁぁ──あ゛」
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