ベニバナ

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ベニバナ

   あの頃、綺麗になってく君に  すこし戸惑っていた僕に  大人になれば どんな景色が  目の前に広がっているんだろう…と     曖昧に視線を   はずしぎみに話す時も   前までよりかずっと   茶化さないでいられた      命のつぎに    大事なものに    手を触れられることに    嬉しい以外の言葉    さがしていた      汗だくになり    競いあい歩き    てっぺんで受けた風の    量も硬さもみんな    変わりはじめていた        無理するなよと 元気出せよと  どっちのボールを選ぼうか  どうやったら声が ワンバウンドで  君まで届くかなって考えた     ゆうべの謎も   まだ欠片で残ってるけど   小さいヤツで、ほど   指を切りそうだからスルー      もどかしい朝に    慌ただしさに    追われつづける毎(ごと)に    苦しい以外の言葉    さがしていた      陽射しの強い    カンカン照りに    思わず笑みをこぼす    何がきっかけでもね    しあわせならいいさ       命のつぎに   大事なものに   手を触れられることに   嬉しい以外の言葉   さがしていた    大丈夫、もう   独りでも行けるよ   靄(もや)が切れ出す道の   濃さも広さもみんな   あの頃とちがって    綺麗になった君の  頬をてらしてる (2013.05.22)
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