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陽炎
小さな白い背が日なたを駆けてゆく
その先で彼女と目を合わせようという花
服の淡さを増した母は
夏をおよぐ
噴水の虹を過ぎたあと
やさしかった
歩くスピードが
私には心地好かった
同じ気持ちが並ぶ
それだけで頬がゆるんだ
しっかりと二人
合わせていたリズム
でも今は
あなたの知らない道をゆく
叩き割れずに
しまった記憶
ゆらゆらと煌(きら)めき
やがて愛しく
わらって、きえて、
大きな愛が後押ししながらメモってる
彼女が出会った必然を書き留める物語
汗をぬぐう仕草で母は
夏をめくる
陽炎に夢中で
見過ごしていた空がある
無意識にはさむ栞は
誰のため…
ただ眺めてればいいのに
切なさまでの距離を
また計ろうとしてる
ほんのちょっぴり
背を追い越しただけよ
わたしの肩越しに
欲しかった未来は
見えていたかな
気づけてたかな
たぶんねえ、雲ひとつ
わずか動くだけで
嬉しかったでしょう
しっかりと二人
合わせていたリズム
でも今は
あなたの知らない道をゆく
手はつないでるかな
座り込んでるかな
ゆらゆらと煌(きら)めき
やがて愛しく
わらって、きえて、
(2013.08.10)
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