緩やかでいて確かな恋情

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目が覚めた。昨晩目覚ましをかけ忘れて寝てしまったため不安になる。今は何時だろうか。買ってまだ新しい電波時計を確認すると幸いまだ4時半、いつも5時に起きているから少し早い位だ。安心して起き上がると少しの高揚感が、いつもと違う朝を迎えさせていた。動悸が早い。どくどくと期待を訴えかけているかのように早鐘を打つ鼓動はそわそわと私の足を浮き立たせる。なんだろうか、この感情は。状態は。今まで感じたことのない思いが私の背を押している。早く気づけというかのように体の状態として訴えかけている。だが、今日は大学に行かなければならない。いつまでも理由のわからない浮かれを気にして準備をしないわけにはいかないのだ。せわしなく準備を済ませると家を出る1時間前にすべての用意が終わってしまった。音のない世界が私の思考を乱す。昨日の穂鍬の話の真意を探り出そうとする。話がある。ただそれだけのことなのに、なにかが引っかかっているのだ。そう、穂鍬は君にふさわしい存在になるといっていた。どういうことだろうか。ふさわしいとはいったい…。考えていると時間はあっという間に過ぎ、いつのまにか家を出る時間を5分も遅れている。早く出なければ。せわしなく鞄を手に取り靴を履く。鍵をかけ、浮き立つ足で登校した。
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