シンデレラは

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少女は周りから、「シンデレラ」と呼ばれていた。 本名は別にある。 スィーデ・レィラ。 耳慣れない音であるのは、彼女が遠い辺境の国の出身だからだ。 彼女が幼い頃。 国は他国からの侵略を受けた。 結果、国は滅び、その国の人々は奴隷として売り買いされた。 彼女も、その内の一人である。 奴隷として初めて仕えた家。 以後、彼女は10年近い歳月を、その家で過ごすことになる。 「シンデレラ」。 誰が名づけたか、彼女の本名をモジられ、彼女は灰かぶり姫と呼ばれ続けた。 呼び名が示すとおり、彼女は『家』に良く思われてはいない。 特にその家の娘達――三姉妹には、まるで仇か何かのようにこき使われていた。 それでも、彼女は腐らない。 ホコリにまみれ、ガラクタの散乱した物置を自室としてあてがわれても。 冷め切ったスープ、カビのはえたパンのみが彼女の食事だとしても。 掃除したそばから屋敷を汚され、丸一日がかりで掃除をさせられたとしても。 灰かぶり姫と、揶揄されても。 私は大丈夫。私はまだどん底じゃない。 と、心の底から信じられる、楽天家であった。
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