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「お嬢様。
ガラスの靴でしたら、お嬢様のお部屋でお見かけしましたが…」
「なんですって!?
どうしてそれを早く言わないのっ、この、グズっ!!」
と、娘は文句を言うが、それで靴が出てくるわけでもない。
怒鳴りながらも、足は自室へと向かっていた。
シィラも、愚痴を聞かされながら後に続く。
「シンデレラっ!! 一体どこで見かけたと言うのっ!?」
部屋の中で彼女は問いかける。
シィラは机の上を指差してやった。
そこに、ガラスのケースが置かれている。
「ああ、よかった。ここにあったのね――っ!?」
それに手をのばしかけた時。
口元に、何やら小さな布を押し当てられた。
続いて、ドサリと人の倒れる音。
倒れたのは娘だ。
娘をベッドへ寝かしつけたシィラは、一人つぶやく。
「恐ろしく効く薬ね」
布に染み込ませた薬は睡眠薬である。
これは、酒場の仕事を手伝っていた際、客の男からもらった物だ。
「病気で苦しむ母を、少しでも楽にしてあげたい」
そういう『芝居』で、拝借した。
そう、シィラは、この一瞬を狙っていたのである。
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