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夜も更け、招待客のほとんどが踊り終えた頃。
王子は、辺りをキョロキョロと、落ち着き無く見渡していた。
そんな彼の元に、一人の男性が擦り寄ってくる。
「何をしている、王子。
最後の姫君が、お前を待っているぞ」
「叔父上」
叔父は、王子の肩に手を置いて、彼を急かす。
「さあ、行ってこい」
「待って下さい、叔父上。
まだ、踊っていない方が居られるのです」
王子はそれに抗った。
と、それを半ば予期していたのだろう、叔父は怖い顔を作って彼に言う。
「やめておけ。
それは、先ほどの女性のことだろう?」
「えっ……」
「わかるさ。
だがな――
あれは、まずい」
「何故ですっ!?」
「『美し』すぎるんだよ。
ああいう手合いは、大抵が裏の顔を持っている。
彼にも次期国王たる御身が、相手をしていい手合いじゃあない」
「叔父上は誤解しておられますっ!
彼女は、そのような方では――」
「冷静になれ。
それはお前がのぼせ上がっているだけのことだ。
――それにお前とて、初めから選択肢が無いことは承知だろう?」
これが出来レースであると王子に教えたのは、何を隠そう、この叔父だ。
彼は、現国王の弟である。
兄が早いうちから王位についたため、国政の上での彼の職務はほとんど無く、その浮いた時間を自由気ままに使うことで、彼は日々を生きてきた。
父や家庭教師が絶対に教えないだろう俗な数々を、この叔父は王子に吹き込んでいる。
周りの誰もが語れない知識だけに――
王子は、彼のことを評価し、尊敬していた。
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