11人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな、王子にとっては頭の上がらない『大人』に、彼はこのとき初めて、噛み付いたのである。
「いくら叔父上の言葉といえど、こればかりは聞けません。
私は……」
王子は、息を吐いた。
「私は、あの方と生涯を添い遂げたいのです」
「……本気か」
「本気です」
初恋、一目ぼれ。
王子は、正直、純粋無垢、けがれを知らない――
要するに、『お坊ちゃん』だった。
純粋ゆえに、ただ、自らの愛を、湧き上がる衝動を、心から信じた。
対する叔父は、世に『擦れた』人物である。
ゆえに彼には、それが一時の思い込みであることも、下手を打った時の末路も、手に取るように見えた。
けれど、彼は。
良い意味でも悪い意味でも、無責任な男だった。
最初のコメントを投稿しよう!