12時の鐘

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そんな、王子にとっては頭の上がらない『大人』に、彼はこのとき初めて、噛み付いたのである。 「いくら叔父上の言葉といえど、こればかりは聞けません。 私は……」 王子は、息を吐いた。 「私は、あの方と生涯を添い遂げたいのです」 「……本気か」 「本気です」 初恋、一目ぼれ。 王子は、正直、純粋無垢、けがれを知らない―― 要するに、『お坊ちゃん』だった。 純粋ゆえに、ただ、自らの愛を、湧き上がる衝動を、心から信じた。 対する叔父は、世に『擦れた』人物である。 ゆえに彼には、それが一時の思い込みであることも、下手を打った時の末路も、手に取るように見えた。 けれど、彼は。 良い意味でも悪い意味でも、無責任な男だった。
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