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シィラらが描いたシナリオは、こうだ。
――かつて、一つの国が滅ぼされた。
その国の人々は散り散りになったが、それは王族とて例外ではなく、あるいは死に、あるいは行方知れずとなった。
しかし、その国の王は、「まだ幼い末姫だけは」と、一人の姫を落ち延びさせていた。
その姫は、途中、悪漢に捕らえられ、奴隷として売り買いさせられそうになる。
すんでのところでそれを救ったのが――
この屋敷の当主。
彼は姫を家へ連れて帰ると、彼女を養子として迎え入れ、他の娘達と同様、大切に育ててきた。
今までその存在を公にしなかったのは、彼女の身分に差しさわりがあった
――滅ぼした国の姫である――
からだが、あまりに美しく育った彼女を見て心動かされた当主は――
ちょっとした親心で彼女を舞踏会に出席させたのである。
それがどうしたことか、王子の目に留まり――
と、いうのが、大まかな話の筋であった。
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