《エピローグ》積極的灰妃

5/9
前へ
/36ページ
次へ
主役は、出番を待っている。 顔には華やかな化粧が施され、着ている物は、あの時のドレスに勝るとも劣らない、輝く純白。 女性が、言った。 「とても美しいですよ、シィラさん。 わたくしが今までお目にかかった、どの女性よりも美しいと思います」 シィラを美しく飾り立ててくれたのは、あの時の女性である。 『計画』は彼女にも打ち明けられ―― 心優しく、そして頼もしい彼女の協力も得られていたのだ。 「シィラ。私ゃ、うれしいよ。 生きてお前さんの晴れ姿を見られるとは」 「チィばあ」 老婆も、すでに奴隷ではない。 表向きは姫(シィラ)の家臣 ――旧王家の奥を取り仕切っていた人物―― という経歴になっている。 やがて。 屋敷がいっそうの喧騒に満ちた。 人々の声が飛び交っている。 「どうやら、お迎えが来られたようですね」 窓の外には、馬、人、人、馬車、人、人。 長い行列が、屋敷を目指し、行進している。 先頭には、白馬。 馬上は、燦然と輝く衣装に身を包んだ、王子。 「さあ。 準備はいいですか、シィラさん」 「はい」 浮かんでは消える、様々な出来事。 悪い思い出は、全てここに置いてゆこう。 ここからは、全てが幸せで満ちるように。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加