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主役は、出番を待っている。
顔には華やかな化粧が施され、着ている物は、あの時のドレスに勝るとも劣らない、輝く純白。
女性が、言った。
「とても美しいですよ、シィラさん。
わたくしが今までお目にかかった、どの女性よりも美しいと思います」
シィラを美しく飾り立ててくれたのは、あの時の女性である。
『計画』は彼女にも打ち明けられ――
心優しく、そして頼もしい彼女の協力も得られていたのだ。
「シィラ。私ゃ、うれしいよ。
生きてお前さんの晴れ姿を見られるとは」
「チィばあ」
老婆も、すでに奴隷ではない。
表向きは姫(シィラ)の家臣
――旧王家の奥を取り仕切っていた人物――
という経歴になっている。
やがて。
屋敷がいっそうの喧騒に満ちた。
人々の声が飛び交っている。
「どうやら、お迎えが来られたようですね」
窓の外には、馬、人、人、馬車、人、人。
長い行列が、屋敷を目指し、行進している。
先頭には、白馬。
馬上は、燦然と輝く衣装に身を包んだ、王子。
「さあ。
準備はいいですか、シィラさん」
「はい」
浮かんでは消える、様々な出来事。
悪い思い出は、全てここに置いてゆこう。
ここからは、全てが幸せで満ちるように。
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