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屋敷に一歩足を踏み入れれば、そこには吹き抜けの広間と、二階へ続く大階段がある。
シィラは、入り口から真っ直ぐ正面の踊り場に居た。
王子は、階段の下で、彼女を見上げている。
――ここは、終わりと始まり。
二人は、視線を合わせ、互いに微笑んだ。
「シィラさん。
――いや、シィラ。
こちらへ」
王子が手を差し伸べる。
ゆっくりと。
シィラは万感の思いで、階段を一段一段降りてゆく。
「――靴が、ありました。
私は、このガラスの靴の持ち主に恋をした。
ゆえに、この靴の持ち主を――
この靴がピタリとはまる人物を、国中探しました。
しかし、誰もが靴を履けなかった。
――残るは、あなた一人です」
王子の後ろには、あの老人が居た。
彼が差し出す靴を手に取り、王子はうやうやしく、シィラの前にひざまずいた。
「履いて、いただけますか」
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