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「まあ、あれだけの美人と結ばれるのも、男子の本懐か」
全てが王子の望む通りになるわけではないだろう。
が、彼女に翻弄される人生も、それはそれで幸せであるのかもしれない。
何しろ当の王子は、かの女性に『惚れきっている』いるのだから。
「だがそれは、兄上にも、有力貴族どもにも逆らう茨の道だ。
――その意味が、わかるな?」
「わかります」
「なら、いい。
可愛い甥っ子の頼みだ、黙認してやろう」
ポン、と王子の背中を叩き、叔父は言った。
本来なら、止めるべき立場だろう。
だが彼は、無責任にも王子の行動を、『知らんぷり』した。
「叔父上。ありがとう御座います」
無作法な叔父とは対照的に、王子は深々と頭を下げた。
下げた視線の先に、胸元のバラが、色鮮やかに映る。
と、その時。
会場の隅で、小さなどよめきが起こった。
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