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私はポケットから数珠を取り出して、しっかりと握って準備をした。
「巫女様! それじゃあ、このご依頼を片付けてから、レナちゃんのうちに行くとしますか?」
「はい!! 心霊王子」
私はこの道を選んで正解だったと思う。
医者という職業に就いて、生者を救いながら、環さんを手伝って、死者も救う。
たまに、嫌いになることもあるけど、でも本当は皆清らかで優しい心を持っている。私はそんな人たちを救えることを誇りに思うし、そして、ありがたいとも思う。
環さんは、生きている時にはなかなか伝えられない言葉を届ける仕事。
私には環さんほど特別な力はないけど、でも、生きているときに気づかせてくれたから、私は生きているうちにたくさん『ありがとう』という愛のこもった言葉を伝えていこうと思う。
環さんは、バッグの中から、札を取り出しつつ、
「ああ!! そうそう。一つ、レナちゃんに言い忘れてたんだけど……」
と、急に言い始めた。
「何ですか?」
「あのね、実は俺らも前世で色々あったんだよ」
「え!! うそっ! どんなのですか? 悲恋の恋?」
環さんは目を細めて私のほっぺにちゅうをしながら、「ひ・み・つ」と呟いた。
ちゅうされた箇所が熱を帯びていく。
ドキドキが……止まらない。
きっとこれからもいろいろあると思うけど、それでも私は、このちょっぴりスリリングで、ワクワクするような日々を環さんと一緒に歩んでいく。
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