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画面の中から表れたのは紛れのない美少女だった。
「えーっとぉ……はじめまして♪」
「……っ!?ふ、服はどうした!!?」
「ふぇっ!?なんで私裸なんですか?」
俺は画面を見る。
服は画面の中に取り残されていた。
俺がそれを確認したのと同時に画面が切り替わり、デスクトップが表示された。
「ったく…どうなってんだよ。とにかくこれでも着てろ」
俺はクローゼットから部屋着を出し、それを少女に着せた。
「ありがとうございますっ。ところで……」
「ん?どうしたんだ?」
「なんで私ここに居るんでしょう?ってか、ここどこですか?」
「ハァ……ここは俺の家で、お前はそこのPCの画面から出て来たんだよ」
「またまたー、ご冗談を♪(笑)」
「冗談じゃねぇっ!こんなんで嘘ついてどうすんだよ……」
……まぁ、傍から見れば嘘みたいな話だとは思う。
でもこれは紛れもない現実だ。
「……まぁいいや、俺は朝比奈奏。お前は?」
「紗織です。上の名前は……思い出せません」
「年はいくつだ?」
「17歳です」
「俺と同い年か……じゃあ住んでるところは?」
「分かりません」
「なにか覚えてることは?」
「ないです」
どうやらこの少女の認識では気がついたらここにいたらしい。
さっき画面につっかえたことも覚えていなかった。
「ったく……お前が思い出すまで俺が面倒見てやるよ」
「本当ですか?」
「あぁ、女の子一人を放り出す程俺は鬼じゃない」
「やさしいんですね♪」
「……俺がそうしたいからそうするだけだ」
「ありがとうございますっ」
幽霊にしろそうじゃないにしろ俺はこの子を放り出す気にはなれなかった。
なぜか力になってあげたいと思ったからだ。
それに一人暮らしは少し寂しかったから、話し相手が出来たみたいで正直嬉しかった。
仮に幽霊だったとしても悪霊だとは到底思えない。
「あの……奏さんって呼んでも大丈夫ですか?」
「奏でいいよ。お前の事は何て呼べばいい?」
「私の事は気軽に紗織って呼んでください」
「わかった。じゃあ紗織、とりあえず服買いに行こう」
「え?服なんてそんな……いいんですか?」
「さすがに着る服ないのは辛いだろ。1週間分の服と下着ぐらいなら買ってやるよ」
「……見ず知らずの私にここまでしてくれるなんて感激です」
「もう知らない仲でもないだろ?」
「それもそうですね♪」
「これからよろしくな。紗織」
「はいっ、こちらこそよろしくお願いしますね♪」
紗織は俺に優しく微笑んだ。
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