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レンの耳元で、アスカが兄の名を呼んだ。しかし、レンは目前の光景に夢中だった。
直後、2人の身体が宙に浮いた。
アスカが悲鳴を上げてはじめて、レンは状況を理解した。
レンとアスカは巨大な何かに掴まれ、抱き上げられていたのだ。
アスカの目前には美しい女の顔があった。
レンの目の前には蛇腹状の鱗……まさしく蛇の腹があった。
レンが「離せ!」と叫ぶなか、アスカは震える声で
「お兄ちゃん、やめて。ラミアよ」
と呟いた。
レンには聞き覚えのない名だったが、アスカは過去読んだ本に登場した恐ろしいその魔物を知っていた。
ラミアは子どもをさらう不眠の魔物だった。
上半身は美しい女の姿をしているが、下半身は大蛇で、とぐろを巻いて兄妹の身体に巻き付いている。
ラミアは高笑いをあげて、目前のドアを大きく開けた。
「人間の子だよォ! しかも同じ臭い! 美しい兄妹がこの城の宴にきたよォ!」
異形の貴族たちが一斉に、レンとアスカに注目した。
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