幻想の城の宴

6/10
前へ
/242ページ
次へ
だが、ラミアは兄妹が逃げないよう、2人の目前の床に自身の下半身を這わせていた。 兄は妹を抱きしめ、周囲を睨んでいた。すると、周囲の隙間から一人の男が現れた。 その男は長い銀髪を三つ編みに束ね、肩から胸に垂らしている。 上着に着ているのは、貴族を思わせる深い群青色のジャストコールで、ひざ下に履いている黒いキュロットはホコリひとつついていない。 その男がニッコリと微笑むと、紫色の唇の向こうに、鋭い八重歯が見えた。 「我が名はヴァンパイアの代表、ピエル。さあさ、まずは名前を教えてくれ、小さく美しい兄妹」 ピエルと名乗った三つ編みの男は、丁寧な会釈とともにそう言った。 レンは自分の名を名乗ると、妹を見つめて、「この子はアスカ」と言った。 ピエルはワインを嗅ぐときと同じ顔つきで、声高らかに言った。 「ンー、レン! 水滴が落ちたときのような儚い名だ! そしてアスカ! 鳥が飛び立つときの音のような、爽快な名だ! だが、アスカは、どうも顔色が悪い。どうしたのかね?」  
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11748人が本棚に入れています
本棚に追加