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社交の場でも完璧な笑顔を浮かべるものの、その表情はどこか蝋人形のようで、彼女に好意を抱く者はいなかった。
国王とは許嫁だった。夫もまた、妻の心の内を知らず、彼女の外面によそよそしさを感じていた。
「おはよう……怒っているのかい?」
クロウディアは朝が弱いだけなのに、夫は朝、目覚めるたびに妻の機嫌を伺った。
クロウディア本人も、こんな自分に嫌気が差していた。何度も変わろうと思った。
だが、幼少期から厳しい教育を受けてきた彼女は、婦人の笑顔だけを特訓し、他の表情を浮かべる術を知らなかった。
まるで石。石の笑顔の王妃。周囲は彼女を表すとき、そう囁き、本人も自分をよく石に例えて思考した。
彼女には、それよりも大きな、もうひとつの問題があった。
妙齢を終えた頃なのに、一向に世継ぎが生まれなかったのだ。
やはり自分は石だ。華も草も生えぬ、無骨な石だ。
クロウディアはいつからか自分をそう思うようになり、周囲もきっとそう思っているだろう、と考え、そんな妄想が彼女を責め続けた。
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