灰色の魔女

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──腹違いの弟が紅蓮色の鬼と化した裏で、あの暗い森に灰色の妹がいた。 彼女を発見したのはやはり山賊の一団だった。 蛇の髪を持つ赤子に、彼らはその子を剥製にして売ることを考えた。 だが、次の瞬間、十数人いた山賊が皆石と化した。 ……その赤子と目が合った者が、彫刻刀いらずの精巧な石像と化したのだ。 だが、一人だけ、石にならない老人がいた。 彼は元々貴族お抱えの学者で、鑑定や翻訳に秀でていた。 山賊は彼の主を殺したが、老人の学は役に立つと判断し、彼を飼うことにした。 その老人は盲目だった。 老人は赤子の様子を察し、彼女を守り、育てることを、その生涯最後の仕事とした。 彼女の親指にはクロウディアと刻まれた指輪があった。 指輪に彫られた名が隣国の王妃のものと知った老人は、誤ったかたちで女児が捨てられた理由を理解し、彼女に母の名の一部をとってクラウドと名付けた。 クラウドは予め賢い思考を有し、自らの脚で立つ頃には、昆虫の生態から自分が母親に捨てられたことを理解した。  
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