灰色の魔女

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成長するにつれて、クラウドの容姿はこの世のものとは思えないほど、美しくなっていった。 神の心を虜にするほどの、魔女のような美しさだった。 だがその毛髪はやはりおぞましい蛇で、彼女と目が合った生きている者は、鹿も兎も石になった。 クラウドは老人の言いつけを守り、黒い頭巾で頭を覆い、青春を過ごした。 その性格はおとなしく、食は細い。動物と戯れるわけでもなく、時々老人の手伝いを素直に聞きながら、質素な生活を送っていた。 だがひとつだけ、彼女は気になって仕方のないものがあった。 それは老人が毎晩つけている手記だった。しかし、その本は決して開けるな、と老人に念を押されていた。 クラウドが19歳になった頃、育ての親である老人が死んだ。 彼女は硬くなった老人をみて、彼は目が見えるようになったのだ、と思い、大切に、小屋の奥に安置することにした。 しばらくは、老人の言いつけを守り、森の奥で暮らした。 しかし、彼女には気になって仕方のないことがあった。 老人の手記だ。 やがて、死んだ言いつけよりも興味が勝り、クラウドは老人の手記を読んでしまう。 そこには、盲目の彼が残した点字の手記が残されていた。一部、読み解くことが出来た。 メドゥーサという言葉から始まる……魔女の生態についてだった。
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