11746人が本棚に入れています
本棚に追加
成長するにつれて、クラウドの容姿はこの世のものとは思えないほど、美しくなっていった。
神の心を虜にするほどの、魔女のような美しさだった。
だがその毛髪はやはりおぞましい蛇で、彼女と目が合った生きている者は、鹿も兎も石になった。
クラウドは老人の言いつけを守り、黒い頭巾で頭を覆い、青春を過ごした。
その性格はおとなしく、食は細い。動物と戯れるわけでもなく、時々老人の手伝いを素直に聞きながら、質素な生活を送っていた。
だがひとつだけ、彼女は気になって仕方のないものがあった。
それは老人が毎晩つけている手記だった。しかし、その本は決して開けるな、と老人に念を押されていた。
クラウドが19歳になった頃、育ての親である老人が死んだ。
彼女は硬くなった老人をみて、彼は目が見えるようになったのだ、と思い、大切に、小屋の奥に安置することにした。
しばらくは、老人の言いつけを守り、森の奥で暮らした。
しかし、彼女には気になって仕方のないことがあった。
老人の手記だ。
やがて、死んだ言いつけよりも興味が勝り、クラウドは老人の手記を読んでしまう。
そこには、盲目の彼が残した点字の手記が残されていた。一部、読み解くことが出来た。
メドゥーサという言葉から始まる……魔女の生態についてだった。
最初のコメントを投稿しよう!